例を出します。私はアメリカのドラマが大好きで、英語の勉強と称してよく見ます。そこで出てくる会話を例文として授業で使います。今回はTouchというドラマに出てくるセリフです。
leave(残す)という動詞は、一般的にはbuy型に区分され、「方向のfor」を使うとされています。例外として、ある人が死後に何かを「残す」ときにはtoを使うと辞書に書いてあります。
たまたま見ていたドラマで死後に「残す」場合でもtoのときもforのときもあったので紹介します。
My father left the station to his damn horse.(私の父は牧場を彼のクソ馬に残した)
この文のstationは「駅」ではなく「牧場」です。オーストラリア英語では「牧場」という意味もあります。ドラマを見ればわかるのですが、世界中の一見無関係な人たちがお互いに影響しあうという物語なので、多くの国々が舞台になります。このシーンはオーストラリアが舞台でした。そこで遺言で牧場を誰に「残す」のかという話なので、文脈から「牧場」と訳しました。
もう一つの例文はこれです。
Mr. Green left this for you. It’s his belongings.(グリーンさんがこれをあなたに残した。それは彼の持ち物です)
グリーンさんは死刑になってしまうのですが、話の展開上大事なものを主人公に「残す」のでした。
どちらも死後に「残す」のに一つはtoで一つはforでした。二つの違いといえば、最初の文は遺言で法的に「残す」、二番目の文は正式に残したというより、看守に頼んで主人公に「残す」という違いです。
遺言で「残す」ということは法的に必ず相続人のもとに「到達」すると考えていいのでしょう。だからtoです。遺言を書いた時点で死後に遺産が「到達」することが決定しているのです。
二番目の方は、死刑囚のグリーンさんが看守に渡してくれと頼んだ時点では、その物が必ず「到達」するとは限りません。主人公はその場にいなかったのです。ただ、その物は主人公の「方向」に向かっています。だからforです。
つまり死後に残す場合は必ずtoというわけではなく、文脈から「到達」するかどうか考えればいいのです。そこだけ覚えておけば、他に何も覚える必要はありません。